FAVORITE TANGO☆散りゆく撫子
《CLAVEL DEL AIRE》作曲はフアン・デ・ディオス・フィリベルト(「カミニート」等の
作曲者)。「散りゆく撫子」の邦題で知られてをりますが、此の撫子(clavel)は樹木に
根を絡めて生きる所謂(いはゆる)寄生草本のやうで、「なかぞらに咲く撫子」とでも
譯すのが妥當ではないかと思はれます。
昭和12年末、ブエノスアイレス滯在中のテナー歌手藤原義江が此の曲を現地のビクトル
にて録音、翌年夏に日本ビクターから發賣されました。タイトルは「根なしかづら」、
寄生植物との認識下に附けられた邦題乍ら、かづら(葛)は蔓性ゆゑ、些かの違和感を
覺えます。LP時代、東芝EMIから出た數枚に亙るカナロ撰集に収録されてゐたのを
聽き私は此の美しくも心(うら)淋しい旋律に魅了され、以來愛聽してまゐりました。
このたびYouTubeを檢索した處、私の知らぬ演奏も幾つか見つける事を得ましたので、
5曲撰んでUPいたします。
①フランシスコ・カナロ樂團、歌唱:チャルロ&アンヘル・ラモス、1930年。
https://www.youtube.com/watch?v=mOdjdUU0k8E
②カルロス・ガルデル:古今隨一のタンゴ男聲はお馴染みのギターのみの伴奏。
https://www.youtube.com/watch?v=DeaWLyijRuw
③オルケスタ・ティピカ・ビクトル:亞爾然丁ビクトルの看板楽團。
https://www.youtube.com/watch?v=UEqKKVv7y88
④アルマンド・ポンティエール楽團、歌唱:ロベルト・ルフィノ、若々しき男聲です。
https://www.youtube.com/watch?v=-9zyCJsLL-o
⑤トリオ・ロス・パンチョス:墨西哥最高のボレロ唱ひ。タンゴとはまた別の魅力が。
https://www.youtube.com/watch?v=XRYiYogNs6E
受贈本紹介☆『教皇庁の使者』
服部独美(ひとみ)書き下ろし長篇。
至高の幻想小説(フィクシオン)、そして美しき書物。裝幀は柳川貴代さん。
至高のタンゴ女聲♪♪ロシータ・キロガ
「淡き光に A media luz」
〈コリエンテス街348番地、エレベーターで三階へ……〉
高級娼館のCMソングのやうな歌詞ですが、歐米や日本でも
人氣の高い名曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=9v0cuDP98DI&list=PLB9Z3tKAeyheNHeMKtO8MkLemmCz-Qlsb&index=14&nohtml5=False
「古いギターラ Vieja Guitarra」
キロガの最高傑作だと思ひます。
https://www.youtube.com/watch?v=qz5_fxvv-18&list=PLB9Z3tKAeyheNHeMKtO8MkLemmCz-Qlsb&index=4&nohtml5=False
「君を待つ間 Fumando Espero」
正確に譯せば「煙草を吸ひながら私は待つ」。煙草讃歌めく趣。
https://www.youtube.com/watch?v=ylDKQylhMjE
「センティミエント・マレヴォ Sentimiento malevo」
〈malevo〉は〈ならず者〉、「悲しきならず者」と譯すか。
https://www.youtube.com/watch?v=zvs-IVvsDlw&list=PLB9Z3tKAeyheNHeMKtO8MkLemmCz-Qlsb&index=51
「マンドリア Mandria」
手許の西和辭典には〈臆病な〉〈臆病者〉と出てゐます。
https://www.youtube.com/watch?v=1NHWDD9aafU
「フリアン Julian」
フリアンは男性の名(佛蘭西語の發音はジュリアン)。
去り行きし伊達男への斷ち切れぬ戀情を切々と歌ふ。
1920年、エドガルド・ドナードの處女作です。
https://www.youtube.com/watch?v=j7Ud7_iVUnY