上巳の節句

 上巳(じやうし)の節句とは申すものゝ新暦ゆゑ、此の邊りは半月前の降雪が未だ溶けきらず、桃はおろか梅の蕾も綻んでゐません。朝には少し陽が差しましたが、風が強く午からは粉雪が舞ふほどの寒さでありました。
 最近、家庭などで飾られなくなつた雛人形を引き取つて此れを町中に展示して町興しを圖る自治體が彼方此方に見受けられますが、此の邊では舊い町並を殘す須坂市で其れが觀られるやうであります。此の時季になると、「雛祭る都はづれや桃の月」といふ蕪村の發句を連作小説の或る章のエピグラフに用ひたことなど思ひ起こします。

雲か霧か白氣を被(かづ)く今朝の東山