えっ、おゝ、MOVIE STAR
映畫關係の畫像を整理してゐたところ、ちよつと嬉しくなるやうな畫像が2點、目に留まりました。1點目は怪奇映畫ファンなら喜んで下さるであらう英米老優の4ショットであります。年長者のジョン・キャラダイン(寫眞左下)は1930年代にハリウッドのユニヴァーサルが製作した一連のホラー映畫の何本かに脇役で出演してゐます。ボリス・カーロフかベラ・ルゴシが此の位置に立てば完璧な構圖となるのでせうが、それが叶はなかつたからキャラダインが此處に招かれたのでせう。彼は1988年に歿してゐるので、此の寫眞の撮影は當然それ以前といふことになります。因みに現在俳優として活躍してゐるデヴィッド・キャラダイン、キース・キャラダイン、ロバート・キャラダインはジョンの息子達であります。
ヴィンセント・プライス(右上、1993年歿)は1950年代末から70年代にかけてロジャー・コーマン・プロダクション制作のホラー映畫に主演してゐますが、『アッシャー家の惨劇』『恐怖の振子』『赤死病の仮面』などE・A・ポー原作の一連の作品が殊に傑れてゐると思ひます。因みにコーマン自身が監督をつとめたのはピーター・フォンダ主演の『白昼の幻想』(1968年)あたりまでで、その後は專ら〈製作総指揮〉であります。プライスは其の後もハリウッド怪奇路線の大物として活躍しますが、87年(76歳)には『八月の鯨』でリリアン・ギッシュやベティ・デイヴィス、アン・サザーンなどの先輩女優と共演、ホラー以外の作品にも名演技を殘してゐます。
クリストファー・リー(左上)とピーター・カッシング(右下)は言はずと知れた英國ハマー・フィルム製ホラー映畫(1950年代末〜70年代)が誇つた二大スターであります。二人はフランケンシュタイン物やドラキュラ物で何度も共演、とくにリーはドラキュラ役者の名を恣(ほしいまゝ)にしてをり、カッシングはドラキュラ退治に一命を賭すヴァン・ヘルシング教授が持ち役でありました。因みにリー一人(いちにん)のみ、90歳にして今なほ健在、現役であります。
以上の4人が一同に會してゐる此の寫眞はホラームーヴィーに關する何らかの大きなイベントに於て撮られたものでありませうが、その事に關しては私は何も知りません。いづれにしても驚異の一枚と申すべきでせうね。
2點目は何と、名優の譽れ高かつたポール・ニューマン(2008年歿、83歳)若き日の一枚、それも映畫デビューより10年前、18歳誕生日の撮影になるものであります。テネシー・ウィリアムズ原作の『熱いトタン屋根の猫』あたりから觀てゐますが、風貌その他とくに魅了されたやうな記憶もありません。然し、此の一枚にはちよつと驚きました。巧まずして顯はれた匂ふやうな若さが傳はつて來るからであります。