呀といふ間に一年が……
當地へ移つて一年が經ちました。昨年の8月30日、午後2時半過ぎに舊居の在つた築地明石町を車に乘せて貰つて出發、上信越道の坂城ICを下りた時は既に午後6時を廻つてをりました。折からの大雷雨にて邊りは眞暗、篠突く雨が道路に跳ね返つて白い飛沫(しぶき)を上げ、車はまるで宙を走つてゐるやうでありました。
引越して間もなく肺炎を患ふなど、いろいろな事がありましたが、當地にて得た友人Mr.Vermilionの御親切も得て、何とか風雪(文字通り寒風と降雪の一冬)に耐へ、その後の暑熱も遣り過ごして今日を迎へた……と思ひ返されます。
この先しばらくは氣候も穩かにて、葡萄・梨・柿など地産の果物が廉價で入手出來る、寔(まこと)に佳い季節であります。實のところ、此の數ヶ月といふもの、體調が思はしくなくて些か辛かつたのですが、秋氣に浸つて出直し、滯つてゐる原稿を仕上げたく思ふ次第であります。
書棚の供花:晩夏の紅薔薇