das Buch

《VERGITTERTES FENSTER》Klaus Mann(1906-49) Amsrerdam:QUERIDO VERLAG N.V.,1937

 クラウス・マンはトーマス・マンの長男。ホモ・セクシュアルであつたこと、また母カタリーナが猶太(ユダヤ)系であつたことなどで偏見に苦しめられ、27歳の時に獨逸を離れてアムステルダムに移住、最終的にはナチス政権の迫害を逃れて渡米、亞米利加の市民權を得てゐます。死因は〈睡眠藥過剰服用〉と傳へられてゐます。
 本書『鐵格子』はルートヴィヒ2世を主人公とする中篇小説、カトリック的純潔志向と同性に惹かれる性癖の狭間で苦しんでゐた美貌のバイエルン王に己の苦惱を重ねてゐたのかも知れません。これ以前にも同性愛者であつたチャイコフスキーの生涯を描いた《Symphonie Pathetique. Ein Tschaikowsky-Roman》を出してをり、これは《小説チャイコフスキー》と題する邦譯が音楽之友社から出たことがあります。
 ルートヴィヒをモデルとした小説(佛蘭西語)として名高いカチュル・マンデスの『童貞王』が中島廣子さんの譯を得て来(きた)る6月に国書刊行会より出版されるとのこと、樂しみですね。