それでも秋の色

〈線状降水帶〉などといふ聞き慣れぬ天候が關東を襲うなど、從來の四季の移ろひとは一線を劃する荒々しい晩夏初秋を目の當たりにして、俳諧の歳時記に象徴されるやうな此の國の気候風土は變容してゆくのかも……と思ひ始めてゐるのですが、それでも彼岸となれば曼珠沙華が咲くなどして、まだ植物は四季に添うて秋の色を顯はしてゐます。

 吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ  若山牧水

 膝や左手首の故障も漸く癒え、暫く前から近所のドラッグストアやコンビニへは自轉車で出かけてゐたので、曼珠沙華や秋草を撮影せんと思ひ立ち、千曲川まで出かけ冠着橋の畔から河川敷へ降りてみましたが、曼珠沙華の姿は無く野生の萩や吾亦紅も見當たらず、芒や葭蘆の穗が靡くばかり、致し方なく河川敷の畑で見かけたオクラ(okra:阿佛利加原産)や韮(ニラ)の花を撮つてきました。歸途、土手を越えて下る際に轉倒(砂利道だつたのです)、掌や膝などに擦傷多数、腿や臂(ひぢ)にも青痣多数、齡を重ねると勘が戻らなくなるのでせうか。首から提げてゐたデジカメは無事で、人さまのお庭に咲いてゐた曼珠沙華を撮らせて貰ふことを得ました。

 千曲河川敷の芒

 曼珠沙華

 秋櫻

 ジャーマンアイリス返り咲き

 紫式部

 韮(ニラ)の花

 オクラの花

 垂れる稻穗

 吾亦紅(ファーマーズ・マーケットにて調達)

 颱風で落ちた柘榴と鬼胡桃

 霧の霽れゆく冠着山(姨捨山)

 冠着橋:對岸は更科・姨捨