1947〜1956:女聲エキゾティック歌謡曲

 讀書から得た新知識とか種々雜多な思ひつきとか氣になることなど、何でも
書きつけておくので、2〜3ヶ月經つとメモが數十枚溜まつてしまひます。
 健康状態に自信がもてませんので、ブログのテーマに關するものは順次撰び
UPしておかうと思ひます。數日前、讀み返したところ、恰好のものが幾つか
見つかりました。取り敢へず第一彈として幼少期に耳にして惹かれた歌謡曲
中で、バタくさい、そしてエキゾティックな趣が色濃く認められる女性歌手の
歌を幾つか撰んでみました。

★「雨のオランダ坂」渡邊はま子/菊田一夫・詞/古関裕而・曲/1947年
ディック・ミネの「夜霧のブルース」ともども映畫『地獄の顔』の挿入歌。
映畫を見た記憶はありません。1980年代(記憶があやふやです)にVHSが
發賣されたので借りて見ましたが凡作でした。水島道太郎と月丘夢路の共演。

 https://www.youtube.com/watch?v=bQI115H-S90

★「雨のオランダ坂織井茂子のカヴァー盤
 織井茂子が1970年代にステレオ録音したアルバムに此の曲のカヴァーが入つて
ゐて、其れが秀逸なのでお聽きください。

 https://www.youtube.com/watch?v=4bHbOywcFiM

★「フランチェスカの鐘」二葉あき子/菊田一夫・詞/古関裕而・曲/1948年
 曲半ばに女優高杉妙子の科白(せりふ)が入ります。此れが不評だつたさうで、
カットして吹き込み直したといふ逸話が傳はつてゐますが、科白入りのはうが斷然
素敵です。オリジナル歌唱の覆刻盤には科白入が採用されてゐます。

 https://www.youtube.com/watch?v=9q18E0h4GfM

★「赤い靴のタンゴ」奈良光枝西條八十・作/古賀政男・曲/1950年
 マイケル・パウエル製作・脚本・監督のバレエ映畫『赤い靴』(1948年・英國)を
見て感激した古賀政男が旬日のうちに作曲したといふ逸話があります。美人歌手奈良
光枝の代表作であります。

 https://www.youtube.com/watch?v=RSBRd15kBLg

★「想ひ出のボレロ高峰三枝子藤浦洸・詞/万城目正・曲/1950年
 世に《三枝子樣のリズム三部作》と稱される主演映畫の第二弾主題歌です。
因みに第一弾は「別れのタンゴ」です(「懐かしのブルース」を第一弾とする説も
あるやうです)。彼女は戰前に音盤デビュー、〈歌ふ女優第一號〉と稱されました。

 https://www.youtube.com/watch?v=kKfsPL_JuXg

★「情熱のルムバ」高峰三枝子藤浦洸・詞/万城目正・曲/1950年
《リズム三部作》の映畫主題歌第三弾、私は三部作の中では此の曲が一番好きで
最後の「黒髪の長き夜を踊り明かさうよ」といふ條に聽き惚れてゐました。

 https://www.youtube.com/watch?v=NDixKCmzjiw


★「巴里の夜」二葉あき子/藤浦洸・詞/原六朗・曲/1951年
 此の歌は子供の頃には知りませんでした。長じて新宿クロノスのマスターから
教へていたゞきましたが、初めて聽いた時にはシャンソンの邦譯盤かと思ひ其の
ことをクロちゃんに尋ねましたら、「あら、まあ、素晴らしい想像力だこと」と
鼻で笑はれてしまひました。

 https://www.youtube.com/watch?v=-IDuzF9wQig

★「黒百合の歌」織井茂子菊田一夫・詞/古関裕而・曲
 映畫『君の名は』第二部主題歌の再録音盤(オリジナル盤は1953年)
菊田一夫脚本のラジオ放送劇(すれ違ひドラマ)が人氣を博し、映畫も大ヒット、
主演の佐田啓二中井貴一の父)と岸惠子は一躍人氣俳優となりました。
「黒百合の歌」は北原三枝扮するアイヌの娘が歌ふといふ設定。此の再録音盤は
織井茂子の最高傑作、絶唱と申すべきでせう。

 https://www.youtube.com/watch?v=fhS95CPstUk

★「カスバの女」ヱト邦枝(えとくにえだ)/大高ひさを・詞/久我山明・曲/1955年
 ジャン・ギャバン主演の佛蘭西映畫『望郷』の中でシャンソン歌手のフレエルが
演じてゐる役の身の上を歌謡曲に仕立てたものです。三番の歌詞はディートリヒの
『モロッコ』のなぞりですね。歌手の名が變つてゐて子供の時分から引つかゝつて
ゐましたが、日本流に呼べば邦枝ヱトさんといふ事でせうね。聲がくすんでゐて、
お世辭にも名唱とは申せませんが、此の曲、同業者の歌ごころを刺激するらしく、
美空ひばり沢たまき都はるみ梶芽衣子・リリィ・藤圭子・緑川アコ・ちあき
なおみ・石原裕次郎などがカヴァーしてゐます。

https://www.youtube.com/watch?v=32PitOoP7sg

★「流れのジプシー娘」大津美子/矢野亮・詞/飯田三郎・曲/1956年
 大津美子といへば誰もが「ここに幸あり」を想起すると思ひますが、此の奔放な
歌唱が最初のヒット曲でした。「東京アンナ」「純愛の砂」も佳い歌です。。

https://www.youtube.com/watch?v=9LcI7-op6rc

 爰(こゝ)にUPしたものの他に、淡谷のり子の「いとしのペペルモコ」「戀の
ハバネラ」、松島詩子の「スペインの戀歌」「私のアルベール」、森サカエ
コスタリカの夜」など素敵な歌唱が少なからずあるのですが、Youtube檢索では
見つかりませんでした。