花後の雪〜附・土筆のこと

 天氣豫報で「未明から雪」と報じてゐた通り、午前6時過ぎに目醒めて外を眺めたら銀世界と變じてゐました。滿開の櫻に雪が降りかゝる光景は、一例を擧げれば六世中村歌右衛門逝去の日(2001年3月31日、花に降雪、夜には月光も差し、一代の名優が己の死に際して自然を操り〈雪月花〉を顯現させたかのごとき觀がありました)などに見た覺えがありますが、櫻の盛りが過ぎてから雪に遇つたのは初めてではないかと思ひます。正午頃には止みましたが、吹き荒ぶ寒風に震へ上がつてをります。20度を越える日が續いたので、石油ストーブは暫く前に片づけてしまひました。致し方なく電氣炬燵とエアコンで暖をとつてをります。
 午前7時半頃のフォトに寫つてゐる洋盃(コップ)に挿した土筆は此處の駐車場の片隅で採つたものです。此の洋盃は初め白いデコラ(卓上板)の上に置いたのですが、二日ほど經つと緑青(ろくしやう)のやうな微粒粉が零れてゐるではありませんか。「はて何ならむ」と考へ込むこと十數秒、「あゝ胞子」と思ひ至りました。杉菜の叢を目印に土筆を摘んで遊んだのは半世紀以上も昔の事、胞子のことなどすつかり忘れてをりました。持ち歸つた土筆が〈おひたし〉にされて食卓に並んだのは覺えてゐますが、其の味は記憶にありません。味噌を附けて食べた野蒜(のびる)の食感は覺えてゐます。

午前6時頃

午前7時過ぎ

午前7時半頃

土筆