受贈本紹介/柿が出盛り

《受贈本紹介》

『松山俊太郎 蓮の宇宙』太田出版
 松山さんの遺著とも申すべき此の大冊が丹羽蒼一郎さん(松山さんの最期を
看取られた方)から送られて來たのは葉月の末頃でありました。
 まつたく思ひもかけぬことにて、まづ吃驚、そして恐縮かつ感謝の念に耐へ
得ないのですが、淺學のせゐもあつて中々讀破に至らず、第一番に讀み始めた
「蓮の神話学」の章をいまだに彷徨(さまよ)つてをります。其れに加へて
丹羽さんへの御禮(おんれい)も果たしてゐないといふ體たらくであります。
此の上失禮を重ねる譯にはまゐらないので、取り敢へず此處に紹介致す次第。
 蓮と申せば、二十年ぐらゐ前(?)に、松山さんが築地明石町の舊居に見え
られた時の事が想ひ起されます。お出でいたゞくなど畏れ多くてお断りしたの
ですが、どうしてもと仰るので、吉村明彦さんや礒崎純一さんにも同席願つて
お迎へ致しました。清酒一升瓶とスコッチウィスキー1瓶を用意しましたが、
事前の豫測通り呀といふ間に呑みほしてしまはれたので、場所をあらためてと
いふことになりました(本來ならば潤澤に用意すべきところ、さう致すと翌朝
まで「××數へ唄」の類を拜聽せねばなりません。其れだけは避けたく思つた
ものですから同席のお二人に相談の上、斯樣取計らつたのであります)。
 其の折にお目にかけようと思ひ、紅蓮に唇づけんとする少年の横貌の寫眞
(寫眞集『サーカスの少年』から切り取つたもの、モデルは大沢健)を洗面所の
壁面に貼つておいたので、御退去の直前に御覽に供しましたが、一瞥されたのみ
にて御感想はありませんでした。後日氣づいたのですが、其の壁には以前飼つて
ゐた猫の寫眞も貼つてあり、其れがお氣に召さなかつたのでせう。松山さんは
《犬山斬猫軒馬鹿也》といふ號を名乘られるほどの猫嫌ひでいらしたのです。
因みに私は戌年のくせに猫の方が好きです。
 白蓮

 紅蓮(東南亞細亜)


此のカヴァーの寫眞(1972年:細江英公氏撮影)は實に佳いお姿ですね。


【新編・日本幻想文学集成 第2巻】【新編・日本幻想文学集成 第3巻】国書刊行会
 第三巻(谷崎潤一郎久生十蘭岡本かの子円地文子)が26日發賣の由、
未紹介でしたので第二巻(澁澤龍彦吉田健一花田清輝幸田露伴)の書影も
載せておきます。私の擔當巻は第三巻『幻花の物語』です。


【定本 夢野久作全集】国書刊行会:内容見本
 先ごろ校了成つて、來月10日、愈々第一巻が發賣されるさうです。
 【日影丈吉全集】【定本 久生十蘭全集】に續く壯擧ですね。

《柿が出盛り》
 地産の梨や葡萄が姿を消して、今は林檎と柿が最盛期を迎へてゐます。
 廣い庭を持つ家では、たいてい柿の木が植ゑられてゐます。よく頂戴するの
で殆ど購ふことはありませんね。澁柿も多く、此れは燒酎などで澁抜きするか、
干柿にしてますが、私はそこまでは……。柘榴も見かけますが、誰も採らない
ので最後は朽ちて落ちてしまふ所も少なからずあり、勿體ないなぁと思ひます。


Freddie Ryder(fashion model)

 四月にホームセンターで需めた大文字草、賣れ殘り萎れかけてゐた見切品で
したが、根氣よく手當てを施したら、澤山花をつけてくれました。

松山俊太郎 蓮の宇宙

松山俊太郎 蓮の宇宙