受贈本紹介

『完訳 エリア随筆Ⅳ 続篇』チャールズ・ラム/南條竹則譯:国書刊行会

 まづは、完訳おめでたう存じます。南條さんの譯文はもとより、藤巻明さんの評釋に
敬意を表します。往昔、高校の圖書館から岩波文庫版を借り出したことがありますが、
譯文に受け容れ難いといふか馴染み難いものを覺えて十分の一くらゐの處で放り出して
しまひました。南條さんの〈あとがき〉に「……全篇を読んでみたいと思ったわたしは、
岩波文庫戸川秋骨訳を買った。しかし、どうも読みづらくてしようがない。」云々と
ある條(くだり)に接して、「あゝ、やつぱり」と永年の胸の閊へが下りる想ひでした。
各巻をいたゞくたびに行儀よろしからぬ拾ひ讀みをしてまゐつたのですが、完結をみた
今、充分に時間をとつて全巻を味讀いたさうと思つてをります。


ケンジントン公園のピーター・パン』J.M.バリー/南條竹則譯:光文社古典新訳文庫

 南條さんの譯でピーター・パンものを讀めるとは……と、まづ意外の感を抱きました。
これまでに讀むことを得なかったごく初期のものゆゑ、寔に貴重な譯業と拜されます。
ピーター・パンに就いては、未だ書き下ろし途中の『美少年西洋史』に一章を割く豫定で
ありましたので、嬉しくもありがたき資料を得た思ひであります。
 一讀後、三十年ほど前に新書館から出た鈴木重敏氏の『ピーター・パン写真集 ネバー
ランドの少年たち』といふ本(當時、私の擔當編集者であつた安藤和男さんが「お役に
立つと思ひまして」と持參して下さつたのであります)本を探し出し暫し頁を繰るなど
しました。これが彈みとなつて書き下ろしが進捗するといゝのですが……。


『驕子綺唱』平井功:書肆盛林堂

 舊知の小野塚力さんから受贈(本書奧附に協力者として彼の名が載せられてゐます)。
私は四十數年前「寂光のロペス〜未遂の天才平井功」と題して彼に就いての小文を發表、
此の詩集にも觸れてをります(詩歌論集『硝子の繭』に収録)。
 このたび久しぶりに讀み返してみましたが、特に附け加へるやうなこともありません。
其の執筆時より二年ほど前に最上純之介名義の第一詩集『孟夏飛霜』を見る機會があり、
頼み込んで其の場で書き寫しました。其の寫稿が殘つてゐますので序詞(日夏耿之介)の
部分を御覽に供します。倉卒の間に寫し取つたものゆゑ、まさに亂筆であります。
〈最上純之介詩集『孟夏飛霜』寫し〉


 文藝別冊「澁澤龍彦ふたたび」:河出書房新社

 礒崎純一さん(国書刊行会出版局長)から頂戴しました。[澁澤龍彦完全ガイド]に
下記二項を執筆してをられますが、快刀亂麻、鋭い指摘が多々あつて感服致しました。
 〈日本文学の読み手として 「端正な魔王」の鑑識眼
 〈外国文学の紹介者として 澁澤とともに読むよろこび〉


『スーパーアメフラシ』山下一路歌集:青磁

 *万作の黄色にふかくいだかれて孤立死の家は猫の陽だまり
 *乗り継ぎで時間をつぶすと駅中の本屋が世界をすりかえている


「幽」27 山田風太郎特集:KADOKAWA

 風太郎さんの特集といふので期待したのですが……。


ケンジントン公園のピーター・パン (光文社古典新訳文庫)

ケンジントン公園のピーター・パン (光文社古典新訳文庫)

完訳・エリア随筆IV

完訳・エリア随筆IV

スーパーアメフラシ

スーパーアメフラシ