MY FEVORITE*崇福山安樂寺の天南星漿果

 昨秋、Mr.Vermilionに誘はれて訪れた上田市別所温泉は神社佛閣が多くて佳い所でした。中でも安樂寺の八角三重塔(國寶)がやはり印象に殘つてゐます。本堂などから離れた墓地の中にあるのも異樣ですが、よく見れば三重と判るものゝ一見では四重に見えるのであります。初重に附けられた裳階(もこし)といふ庇(または霧除け)のせゐです。
 此の三重塔へ參るには樹木に覆はれた暗くて長い石段を登るのですが、その參道の脇に見事な漿果(液果)を附けた天南星が見られました。葉が枯れてゐたので、品種名は特定出來ませんでしたが、大型の見事な草本であります。
 天南星は里芋科の有毒植物で、高地の水邊の春を彩る水芭蕉・座禅草、切り花として好まれる海芋(カラー)なども親戚であります。日本には蝮草(マムシグサ)、浦島草(ウラシマサウ)、武蔵鐙(ムサシアブミ)、雪餅草(ユキモチサウ)、烏柄杓(カラスビシャク)等々數十種類の天南星が自生してゐますが、佛焔苞を有つ此の植物に魅せられて久しいものがあり、築地明石町在住時には露臺でいろいろ栽てゝをりました。寫眞が殘つてゐますので少し御覽に供します。

安樂寺八角三重塔

参道石段脇に見られた天南星漿果

烏葉武蔵鐙(カラスバムサシアブミ)と武蔵鐙(右)

舞鶴天南星

浦島草と蝮草(右)

浦島草と日本菫の寄せ植ゑ