天南星の鉢

 里芋科の天南星屬に魅せられて久しいものがあります。東京の舊居では露臺で樣々な天南星を培てゝをりました。中には菅原多喜夫さんが見つけて來て下さつた素心浦島草などといふ珍しいもの(浦島草のアルビノといふ風情)もありましたが、引越に際してリコリス彼岸花の類)などと共に大方は彼方此方(あちこち)に縁づけてしまひ、此方へ持つて來たのは浦島草・矢筈薄・透かし百合の僅か三鉢のみ。冬の間、氷點下の外氣に曝されてゐたので聊か心配でしたが、みな生き殘つて四月の末には芽吹いてくれました。
 浦島草はやゝ小ぶりながら佛焔苞(ぶつえんはう)を出し、他に舞鶴天南星と烏柄杓(カラスビシヤク)も芽吹き、こちらは豫期せぬことゆゑ、ちよつと嬉しかつたですよ。白絹姫(シラギヌヒメ、紫露草の仲間)の根も埋めておいたのですが、これは未だ活きが確認出來ません。肉厚の葉が眞綿を纏つたやうな觀を呈するので、此の名稱があります。

天南星の鉢

露臺の飛燕草

 鉢が少なくて寂しいなと思ふ折から、ホームセンターの園藝コーナーで飛燕草(ヒエンサウ。千鳥草、デルフィニウム)の苗を見かけたので購入、みるみる育つて無事開花しました。花の形を鳥に見立てた、日本獨得の命名は、他に鷺草(さぎさう)、鴇草(ときさう)、燕水仙(スプレケリア、アマリリスの突然變異種)などがありますが、此の中で最も造化の妙を極めてゐるのは鷺草でせうね、將に白鷺の翼のミニアチュールを見るやうであります。飛燕草と一緒にダツラ(エンゼルトランペット、朝鮮朝顔の類)の苗木も購つたので、巧く咲かせる事を得ましたら、いづれ畫像を御覽に供します。

水仙

鷺草