ツイッターのエゴ・サーチ②

 先月中頃からPSの動きが遲くなり、苦勞してをります。10年の餘も經つノート(當然XP)ゆゑ、致し方ありませんね。朝から畫像を處分したり、ディスククリーニングをかけたりして少し動きが良くなりましたので、暫く怠つてゐたツイッターのエゴ・サーチを二ヶ月餘遡り、「ええっ」「なるほど」「然うなんですよ」「ちよつと違ふんだけど」と感じた呟きを拾つてみました。(◎は須永の感想です)
        
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須永朝彦氏編訳『怪談』読了、近世の短編怪談を70編ほど集めたもの。わかったこと・  芸は身(命)を助く (詩歌管弦 武術 教養 機転など) ・死ぬときは死ぬ・美男と美女が添い遂げる ・化け物との約束をやぶってはいけない。 》

◎此れは【日本古典文学幻想コレクション】第三巻の御感想ですが、擧げてをられる近世怪談に共通する四つの特色に就いては、迂闊にして全く思ひ至りませんでした。

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山尾悠子さんと須永朝彦さんの対談…!?そんなものがあったのですか。お題がまたすごい…。今週の希望にしよう。3日くらいで届くはず。》

◎こんなものがあつたのですよ。「幻想文学」60號:2001年3月。〈天使と両性具有〉といふタイトルは編集部で附けたもので、山尾・須永の知るところではございません。私の明石町の舊居に山尾さんを迎へての對談でした。これより暫く前にメル友となつてをりまして、互ひのハンドルネーム(個人情報ゆゑ爰には載せません)も相談して決めたのですよ。呟いた方は、インターネット上で掲載誌を見つけて購入なさつたのでせうね。
   
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《薔薇島に波うち寄する千一夜夢占ひに滅びゆく王
  塚本邦雄須永朝彦かな? 》

◎須永の腰折れです。塚本先生はこんな弛い調子の歌はお詠みになりませんでしたよ。これは「白鳥五衰 ルートヴィヒⅡ世に寄せる鎭魂歌」八首中の一首。ペヨトル工房版『世紀末少年誌』に収録してあります。

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《撲殺できそうなのは須永朝彦さんの全集だなぁ…。》

◎前後が分からないので、此の呟きだけ讀むと吃驚します。古典の叢書とか昔の菊判の本などは手にずしりと重いから、みな兇器になりますよ。最近の出版物にも国書刊行会版の『山海評判記』や『マルセル・シュオッブ全集』等々恰好のものが澤山ございますよ。

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《チェロ?を持ってる梅原さんを見て須永朝彦の契−De Vertag−を思い出しました。応募者は九人やって来た。まず、容姿を判じて五人に絞った。次に頸筋の華奢な者二名を残し、最後は指の美しさで決めた。》

チェンバロを聴いていると須永朝彦さんの描く吸血鬼や天使のような美少年を思い浮かべるので実にいい気分である。》

◎此れは二人の方が同じころ別々に呟かれたものですが、興趣を覺えたので並べてみました。正直申しまして、かういふ感應に接するのは嬉しい……。

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《"故障が入る" 。幻想文学誌上の須永朝彦氏の文章であったか。そこで目にして以来のお気に入り。使うのはもっぱらひとりごとの中だけなのだけど。 》

◎此れは「故障」に「異議申し立て」の意味あることを知らぬ人が宮澤賢治に關する論文の中で的外れの批判を展開してゐるのを取り上げた複數人の遣り取りから派生した呟きのやうであります。「幻想文学」に寄稿した文章の中で用ひたといふ記憶はありません。たぶん日本幻想文学集成26『円地文子 猫の草子』の解説「悖徳の彩」の中で目にされたのではないでせうか。「……巷間囁かれて來た樣々な噂(表向き絶對口外出來ぬ類の)が漏れなく網羅されてゐる。よく故障が入らなかつたものだと思ふ」云々。

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アスタルテ書房戦利品。須永朝彦とか佐藤春夫とか塚本邦雄とか。プータロのくせにこんなのばかり買ってるから金がない。》

◎申譯ございませんね。塚本先生や愛誦作家の春夫と並べていたゞいては身の置き所がございません。アスタルテ書房、一部の愛書家たちの間で人気の高い京都の本屋さんですが、私はまだ訪れる機會を得ません。

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須永朝彦「天使」美大生の百合男と金髪碧眼の美しい天使の鬱(ジャック)と薔薇子。登場人物の名前だけでスゴイけど、なんと天使攻の百合男受で驚いたし、しかもホラーで怖っ…!背筋が寒くなってしまった。耽美、先がヨメナイ》

やおい世代の方々にかゝると、かういふ御感想になるのでせうね。

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《すすす須永朝彦のブログだと》

◎漸く氣づいて下さいましたか。こんなものがあるのですよ。

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《そんなことより、森茉莉須永朝彦どっち派という話をしようよ》

◎此れは前後の遣り取りが分からないので、何ごとならむと思ふのみ。

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《江戸期の同人(というか太平記その他の二次創作の作り方)については、これとか面白いですよ>須永朝彦『歌舞伎ワンダーランド』(1990年、新書館)/歌舞伎や能の基本プロットの展開のさせ方を[世界][趣向]という2概念で分析している本です。》

◎『歌舞伎ワンダーランド』のやうな著作が、同人誌に據つて〈二次創作〉をなさつてゐる方々のお役に立つとは思ひませんでした。

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《『薔薇十字社とその軌跡』読了。森茉莉訳『マドゥモァゼル・ルウルウ』をめぐる一件の記述が、偶々数週間前に読んだ情報(須永朝彦氏による)と重なる。atelierocta.com/sun/sunaga57.h…》

◎此の方が讀まれた〈情報〉は、2012年夏に終了した私のHP『明石町便り』(アトリエOCTAのHPに間借り)掲載のバックナンバー2「『マドモワゼル ルウルウ』奇談」です。『薔薇十字社とその軌跡』の語り手(此の本は聞書)内藤三津子女史の應答の一部に事実と異なる箇所があります。其れは、私の藏書が内藤女史の目に觸れるまでの經緯で、女史は「須永朝彦薔薇十字社にときどき遊びにきていたんですが、彼が内藤さん、こういうものがあるといって、古本を持ってきた。それで借りて読んだところ、これはなかなかいいと思い、薔薇十字社風装本で復刊することに決めた。」と話してゐますが、事實はこんな單純なものではなく、もつと奇(くす)しき経緯を辿つてをり、其れこそが奇談なのであります。御參考までに肝心の部分のみを以下に抄出しておきます。

【……ときに、これより數年前、僕はさる古書即賣展にて、茉莉さんが昭和8年に刊行された譯著、ジイプ夫人の『マドモアゼル ルウルウ』を入手してゐた。(中略)
 或る折、この本の事を申し上げると、「持つてないので、是非讀み返したい、貸してほしい」と仰るので、次に拜眉した時に貸して差し上げた。それがお會ひした最後である。それから1年ほど經つた頃、井上さん(當時の友人で雜誌「話の特集」編輯者)を通して返却を申し入れたところ、存外の御返事が齎された。こちらに無斷で又貸しなさつたといふ。その相手が大物だつた。
「どうしても三島さんに讀んで欲しかつたの、それが、あんな事になつてしまつて、もう返して貰へないわ」云々。三島由紀夫に貸したところ、返却なきまゝ昭和45年11月のあの事件に至つたといふ譯である。僕は、腹を立てるといふより呆れ返つてしまひ、直ぐに諦める事が出來た。茉莉さんにも、もう會ふ氣がしなくなつた。
 然し、この本は僕の手許に戻つて來た。澁澤龍彦編輯の「血と薔薇」が出たのは三島生前の事だが、3號で澁澤さんは手を引き、雜誌は4號で廢刊となつた。間もなく、この雜誌の編輯實務を受け持つてゐた内藤三津子といふ遣り手の編輯者が澁澤さんたちの應援を得て薔薇十字社なる出版書肆を興し、「血と薔薇」の寄稿者たち――澁澤龍彦種村季弘・堂本正樹・塚本邦雄・加藤郁乎らの著作を刊行し始めた。僕は塚本氏の代理人として神田美土代町薔薇十字社に出入りするやうになつた。因みに内藤女史は、初め新書館、次いで〈話の特集〉に勤めた方で、井上さんも女史に從つて新書館から〈話の特集〉に移る(この間、新書館御家騒動あれど煩瑣に亙るので省略)といふ經緯があつたので、わりと親しくして貰へた。
 當時、薔薇十字社では島崎博・内藤三津子共同編輯の大著『三島由紀夫書誌』が進行中で、内藤女史は三島邸の書庫に出入りしてゐた(中略)。それゆゑ、『マドモアゼル ルウルウ』の件を話したところ、探してみようとの御返事。數日後、「本、ありましたよ」との連絡を頂いた。僕の印形が捺してあつたので、何の問題もなく持ち出せたといふ。件の印は茉莉さんに貸し出す時、念のために捺しておいたもので、これが三島夫人を納得させたといふ。内藤女史はこれを一讀して「出版したい」と言ひ出し、本の貸與を申し入れてきた。別に拒む理由も無かつたので應諾し、やがて薔薇十字社版『マドモアゼル ルウルウ』が世に送り出された。僕はその本を一冊貰つただけで、茉莉さんからは何の御挨拶もなかつた。(以下略)】

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《青柳瑞穂『睡眠』中井英夫『眠るひとへの哀歌』塚本邦雄『睡唱群島』 須永朝彦『就眠儀式』 #寝る前に読む本》

錚々たる先輩方の御作と並べていたゞき、光榮且つ恐縮に存じます。

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《『掟上今日子の備忘録 第2話』須永昼兵衛という作家(非実在)が書いた「改心刑」(非実在)という本が重要なポイント。この本読んでみたい。それにしても、須永昼兵衛って須永朝彦のもじりだろうが、よくもつけたもんだ。昔、須永朝彦の吸血鬼物を読んだ記憶がある。あと歴史上の美少年の本も。》

◎極く最近の記事です。件のドラマを見てゐないので何とも申せませんが、偶々登場する作家の苗字が同じといふだけの事なのでは……。昼兵衛といふ名が朝彦を踏まへてゐると推測なさつたのでせうか。
 岡田将生が出てゐるので「ふーん」と思ひはしたのですが、近年の連續TVドラマには殆ど期待するところが無いので見ませんでした。同じ局の『偽装の夫婦』は天海祐希主演ゆゑ初回は見ましたが、續きを見る氣にはなれませんでした。私が全回視聽した最後のドラマは數年前に日本TV系列で深夜に放送された伊原剛志主演の『トクボー〜警視庁特殊防犯課』ですね。これは一話完結といふ見易さもあつたかも知れませんが、刑事物としては類の無い、設定も展開も篦棒な作だつたので、DVDが出れば購入しようかとまで思ひました。

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《「閑話休題」ってかいて「あだしごとはさておき」と読ませる須永朝彦について語りたいので今週末だれか・・・誰かそのような同志のいることをいのっていておくれよ 》

◎此れは昨日の呟き。漢文では「閑話休題、言歸正傳」と續くのですが、日本では専ら「閑話休題」のみが多用されてますね。曲亭馬琴など近世の讀本作者が局面を變へる箇所などで「あだしごとはさておきつ」と訓ませたのが近代にも引き繼がれましたが、円地文子がエッセイなどに用ひたのが最後かも知れません。斯樣(かやう)なことに關心をお持ちの方がいらつしやるのは嬉しいですね。

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