《新編日本幻想文学集成》完結

 過ぐる3月末に国書刊行会の《新編日本幻想文学集成9 鴎外の系譜》が刊行されました。


 中島敦矢川澄子編)、神西清池内紀編)、石川淳池内紀編)、芥川龍之介橋本治
編)、森鴎外須永朝彦編)の五作家を収録、第一囘配本が2016年6月でしたから1年9箇
月を經て無事完結をみたのであります。〈新編〉と冠してゐるからには資(もと)となつた
叢書がある譯で、1991年3月より數年に亙つて刊行された《日本幻想文学集成》全33巻が
其れです。當時の内容見本には「全33巻+別巻1」とあり、其の別巻は「古典編 須永朝彦
編訳」となつてをりますが、途中で書肆編集長の方針が「別巻は廃して代りに三巻の現代語
譯」と變り、全く別の企畫として刊行をみたのが私の編譯に成る《日本古典文学幻想コレク
ション》全三巻であります。


《日本幻想文学集成》全33巻の第一囘配本は私が擔當した『1泉鏡花』と橋本治さん擔當の
『2三島由紀夫 』でした。鏡花集は重版が確か6刷ぐらいゐまでゆき、礒崎純一編集長にも
私にも豫想外の嬉しき出來事でありました。

 元版は収録作家を故人に限定してゐたので《新編》刊行に際しては其の後故人となられた
4人の方(安部公房倉橋由美子中井英夫日影丈吉)を新たに加へて第一巻が編まれて
ゐます。實は編集長より依頼を受けて、私は元版も新編も全巻の校閲に從事してをります。
校閲は讀んではならないのが鐵則とされてゐますが、其れは夫れとして、二度に亙り明治・
大正・昭和を代表する作家たちの秀逸短篇に接する機會に惠まれた譯でして、得難き體験で
あつたと顧みられます。