左膝関節痛地獄〜再たまた菅原多喜夫さんから有り難き御差入れ

「秋の終り頃から心身ともに不調、今月に入つてからは宿痾の左足の膝關節痛が再發、
竟(つひ)には左足が踏ん張れなくなりました。階段の上り下りには嘗て無い苦痛を
覺えます。更には自轉車に乘るのも厭はしく、他出して用を辨ずるには餘程の覺悟が
要るやうになつてしまひました。ブログの更新も間遠になり、忸怩たる思ひです」と
此のブログに記したのは舊臘29日のことでありました。

 それでも年を越して三が日までは左足を庇ひながら氣丈(?)に立ち且つ坐りして
ゐたのですが、翌朝目覺めると如何(どう)しても床から起き上がれません。椅子の
ある所まで匍匐して何とか辿り着き、呼吸を整へつゝ椅子の背につかまり、漸く立ち
上がる事を得ましたが、此の時から《関節痛地獄》に耐へる日々となりました。

 直立したまゝ動かずにゐれば樂なのですけれど、此れでは何も出來ません。左足が
踏ん張れないので、僅かでも膝を折ると痛みが走ります。元々重心は左足にあるので、
無意識に左足から踏み出してしまひます。些かなりとも痛みを抑へる爲には右足から
踏み出し、然る後にそつと左足を引き摺り寄せればいゝと頭では判つてゐても三度に
一度ぐらゐは左足が先に出てしまひます。年を取つて學習能力が落ちたのでせう。
 正座は全く出來なくなりました。階段の昇降には從來の四倍も時間がかゝります。
一度醫師にも診て貰ひましたが、診断はお座なり、貰つた湿布も効きませんでした。
藥餌やサポーターなどに就いてはネットで檢索してみましたが、未だ此れといふ物に
出遇へません。今月初めに痛みが多少輕減したやうな氣がしたものですから、二ヶ月
ぶりにブログを更新したのですが、其れも束の間、直ぐに痛みが戻り仰臥する時間が
また長くなりました。

 斯かる折しも、菅原多喜夫さんが「あまり外出しなくても済むように」と仰って、
此の邊では入手出來ない食品を二度に亙り差し入れして下さいました。
 ちりめん山椒・筍の水煮・松茸昆布など上方の名品、土佐の文旦、蓮根や里芋等々。
それに今囘はシャンソンの3枚組CD、ヘレンド展の圖録・繪葉書、ロードショーの
チラシなど「文化の香り」も。何だか、罰が當りさうです。

 〈先月いたゞいたもの〉

 〈今月いたゞいたもの〉食品・圖録・CD


 嘗てハプスブルク家御用達だつた匈牙利(ハンガリー)の青磁窯の逸品を一堂に
集めたといふ《ヘレンド展》も紹介するつもりでしたが、何と今日が最終日と判明、
圖録の表紙畫像のみを載せておきます。

 シャンソンのアルバムには60曲が収録されてゐます。著作權の關係だと思ひますが、
ジュリエット・グレコシャルル・アズナブールジョルジュ・ブラッサンス、ピア・
コロンボ、マルセル・ムルージなどの歌唱が抜け落ちてます。20世紀後半の歌手では、
サルヴァトーレ・アダモは入つてゐてもエンリコ・マシアスは入つてゐません。
 折角ですから、60曲の中から私のベスト・テンを選んでみました。順不同です。

 ★小雨降る径        ティノ・ロッシ
 ★サン・ジャンの私の恋人  リュシエンヌ・ドリール
 ★待ちましょう       リナ・ケッティ
 ★パダン・パダン      エディット・ピアフ
 ★私のいい人        ミスタンゲット 
 ★枯葉           イヴ・モンタン
 ★モンマルトルの丘     コラ・ヴォケール
 ★パリ祭          リス・ゴーティ
 ★人の気も知らないで    ダミア
 ★おゝ、コルシカよ愛の島  ティノ・ロッシ

 ピアフは「カルメン物語」、モンタンは「ガレリアン」、ゴーティは「過ぎゆく艀」、
ヴォケールは「お芝居のよう」を、私なら収録します。
 それからミスタンゲットの「モンノーム MON HOMME」の邦題ですが、此の唄の趣を
傳へるには「あたしの男」とすべきでせうね。

 〈今月いたゞいたもの〉チラシ


 來月、ジェイムズ・アイヴォリーが關はつてゐるフィルムが2作公開される由、
一つは脚色(原作はアンドレ・アシマン)を擔當した『君の名前で僕を呼んで』で、
監督はルカ・グァタニーノ、昨年の製作です。其の關連でアイヴォリー監督・脚色
(原作はE・M・フォースター)の『モーリス』が30年ぶりに4Kデジタル修復版で
公開されるさうです。『モーリス』は『アナザー・カントリー』などと同樣、エイズ
發生以前の作品、時の流れを更めて感じさせられますね。『君の名前で僕を呼んで』の
邦譯本も來月刊行されるやうですが、インターネットで檢索すれば、粗筋など簡單に
知ることが出來ますよ。
 映畫は見たいと思ひますが、當地には映畫館が無く、電車で長野か上田に行かねば
見られません。尤も、爰に採り上げた作品など上映される氣遣ひはまづ無いでせう。

 左膝関節炎に加へて、消化器系や泌尿器系の患ひもかゝへてをりますので、此の先
いかゞなりゆくやら豫斷は出來ませんが、何冊も抱へてゐる書き下ろし稿を少しでも
進めて行かねばと思ひます。ブログの更新も愚癡は控へて、偏つた嗜好が撰ぶ畫象や
音樂・文藝などを紹介してゆく所存です。

  本日:春分の日 午から吹雪 外氣温3℃(15時)