曼珠沙華
お彼岸なので曼珠沙華の花を載せようと思ひたつたものゝいまだ左膝關節炎に苦しむ
身、群落地が遠いので撮りに行けない……。祭日なのでお知り合ひに頼んで車を出して
いたゞき、撮影することを得ました。まさに眞盛り、まづまづのものをUP致します。
未熟咲きor變り咲き?
此の邊では見かけませんが、白花や黄花も今が開花期。當地に移る前、築地明石町の
露臺で撮つたものを載せておきます。白花は紅咲きの白子(アルビノ)ださうです。
鍾馗蘭は九州發の呼稱、これも突然變異の交雜種の由。此の仲間はリコリスと總稱
されてゐますが、亞細亞のリコリスの殆どが中國原産で、日本固有のリコリスは狐剃刀
(キツネノカミソリ)と大狐剃刀(オホキツネノカミソリ)のみ、これらと夏水仙は
魁けて7〜8月に開花します。
白花曼珠沙華(アルビフローラ)2011年
鍾馗蘭:黄花曼珠沙華(オーレア)2010年
曼珠沙華を吟んだ俳句は澤山あります。
野見山朱鳥の「曼珠沙華散るや赤きに耐へかねて」といふ一句は人氣があるやうですが、
此の句は俳句の要諦たる寫生を全く無視してゐる……と豫々私は思つてまゐりました。
曼珠沙華の生態を知らない……と申した方がいゝかも知れません。
抑も曼珠沙華の花は散りません、縋れるのであります。萎れて枯れ果てるまで莖頂に
未練たらしく縋り着いてゐるのであります。「赤きに耐へかねて」などといふ擬人化は
笑止千萬。山口誓子は「すがれたる曼珠沙華など見て行きしか」と正しく吟んでゐます。
つきぬけて天上の紺曼珠沙華 山口誓子
日輪の寂(せき)と渡りぬ曼珠沙華 川端茅舎
女三人無言の昏(くら)み曼珠沙華 野澤節子
曼珠沙華うしろ向いても曼珠沙華 三橋鷹女
斯かる句が秀句として憶ひ起こされますが、私が愛誦措く能はざる曼珠沙華吟は次の
一句であります。曼珠沙華といふ花の妖しさを見事に吟み籠めてゐると思ふのですが。
われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華 杉田久女
私なら「憑きゐし」と表記してしまひさうですが、これは假名書きが佳いかも。