若かりし日の……Ⅳ*歐米映畫スター編

 用心してゐたのに、感冒に罹つてしまひました。春先特有の天候不順に身體が對應出來なかつたのでせう。最近、ごく近所に開店した大型ドラッグストアで購入した賣藥を服用するかたはら、スープや焙茶、温めたミルクなどの攝取につとめてをります。容態が惡化する前にもう一本、本日は二本立です。

 ジャンヌ・モロー:Jeanne Moreau

 ジャック・ドゥミの監督作品「La Baie des Anges」のスチール、日本未公開ですが、後に「天使の入江」の邦題でWOWOWが放映したさうです。1963年制作ですから、既に37歳、「恋人たち」や「エヴァの匂い」よりも後のフィルムであり「若かりし日の」とは申し難いのですが、其處は撮影魔術(magic)を驅使して紗がかゝつたやうな美しい寫眞に仕上げてゐます。、

 マーロン・ブランド:Marlon Brando

 1946年、22歳、映畫デビュー以前、舞臺俳優時代の寫眞です。撮影はセレブに引張凧だつたセシル・ビートン(Cecil Beaton)、後の大成を見抜いて引き受けたのでせう。

 ベティ・デイヴィス:Bette Davis

 1939年撮影、既に二度もアカデミー主演女優賞を受けてゐましたが、此の楚々たる風情の美女が、50年代60年代、中年から「イヴの総て」「何がジェーンに起ったか?」「誰が私を殺したか?」「ふるえて眠れ」「妖婆の家」などで怪演を見せることにならうとは……。

 ヴィンセント・プライス:Vincent Price

 1935年、24歳、30年代は倫敦や紐育ブロードウェイで舞臺に立つてゐたさうですから、其の頃の舞臺寫眞ですね。38年にハリウッド・デビュー、第二次世界大戰後は「肉の蝋人形」など怪奇物への出演が増え、60年の「アッシャー家の惨劇」以後、ロジャー・コーマン監督のホラー作品の常連となり、怪奇王の名を恣(ほしいまゝ)にしました。一連の作品の中では「恐怖の振子」と「赤死病の仮面」が私のfavoriteであります。87年、リンゼイ・アンダーソン監督の老人映畫「八月の鯨」でリリアン・ギッシュ(サイレント時代の大スター)やベティ・デイヴィスと共演、日本でも公開されて評判を呼びました。

 ジョーン・クロフォード:Joan Crawford

 純眞と申してもいゝやうな表情に、後年の大姐御の迫力は其の萌芽も認められません。ガルボと共演した「グランド・ホテル」やサマセット・モーム原作の「雨」(孰れも35年)も佳いと思ひますが、少年時代に見た「大砂塵」(Johnny Guitar,1954」の西部の大姐御ぶりが忘れられません。ペギー・リーが歌ふ主題歌「ジョニー・ギター」も時々無性に聽きたくなります。

 ルイ・ジュールダン:Luise Jourdan

 1939年撮影とのことですから、映畫デビュー(1942)前の18歳、ちよつと怪しげなスナップですね。だいぶ後に彼が演じた英BBC制作「ドラキュラ」のヴィデオを菊地秀行さんから拜借して見たことがあります。

 リチャード・バートン:Richard Burton

 UKはウェールズ出身の演技派、1953年、28歳當時のポートレート、老けてますね。

 ローレン・バコール:Lauren Bacall

 御存じハンフリー・ボガートの夫人、此れは結婚前の寫眞で未だ少女の初々しさが見られますが、聲は獨得のハスキーヴォイス、徐々に險相が顯れて、べティ・デイヴィスが中年以降に拓いた藝域(怖い女)を繼承したとも言はれてゐます。

 ロバート・コンラッド:Robert Conrad

 彼はTVのスターですね。私は少年期に「ハワイアン・アイ」や「ワイルド・ウェスト:The Wild Wild West」など(もちろん吹替)を見てゐます。西部劇仕立(設定は19世紀)の「ワイルド・ウェスト」では諜報員役なので、常に危機に曝され、初中終(しよつちゆう)御覽のやうな囚はれの身となり、其れが見せ場のやうになつてましたね。

 シュワちゃんArnold Schwarzenegger

 墺太利オーストリア)出身。1977年30歳、映畫デビューから7年經つてゐます。此のダサイ容姿で「鋼鉄の男」といふドキュメンタリーに出演してゐるのですが、其の後、美容整形手術を受けてゐたとの疑ひが浮上、件(くだん)の映畫の権利等を買ひ取つて〈整形疑念〉の揉み消しを謀つたと傳へられたことがあります。

 リチャード・ギア:Richard Gere

 映畫デビュー前、ブロードウェイの舞臺で端役を演じてゐた頃の寫眞でせう。個性的な風貌、つまり美形ではない……。

 レオナルド・ディカプリオ:Young Leonardo diCaprio

 パンク・ファッションのやうな……、ウェブでよく見かける寫眞です。