受贈本紹介

 頂戴した書籍はもつと澤山あつたと思ふのですが、何處に隱れたのか、
見つかりません。 取り敢へず、目についたものだけでも紹介しておきます。

★ヴァーノン・リー幻想小説集『教皇ヒュアキントス』中野善夫:譯*国書刊行会

 一年以上も前のものなので、最早新刊とは申せませんが、佳き書ゆゑ載せて
おきます。 柳川貴代さんの裝丁、林由紀子さんの裝畫、美しき書物であります。

★相澤啓三歌集『音叉の森』書肆山田

 詩人の三冊目の歌集、大患を乘り越えられた前後の詠草が収められてゐます。
相澤さんが此れまでに詠まれた首數は、歌人と稱へ乍ら長らく無詠の私の其れを
はるかに上囘るのではないかと思ひます。
  〇ぬばたまの他界にわたる貌鳥は音なく来居てわれに見入れり
  〇シャルリスに拐されてオー・シャルのクロークにわが預けし時間
  〇美しき星滅びむといたまざれ若きらになほ美しき時
  〇わが性(さが)を手鎖にして書かざりし重きことども闇に沈めり

★大井学歌集『サンクチュアリ角川書店

  〇十本の指ににほんの名無し指ありて冷たき水掬ぶかな
  〇楽器持つひとを眼で追うわが癖のとりわけバイオリン背負う少年
  〇死ののちも聴覚しばし活きいるとわれならぬもの音をきくもの

★「Fukujin」No18*特集:追悼 松山俊太郎

 松山さんに初めてお目にかゝつたのは新宿花園神社社務所にて催された
加藤郁乎さんの出版記念會(1971年頃)であつたと思ひます。其の後、
相澤啓三さんのお宅で偶々同席の折、俳句の雜誌に執筆してゐた連作小説を
指して「文章に妖氣がある」と仰つて下さいましたが、まさか松山さんに
褒められるなど思ひもよらなかつたので、其の時は揶揄(からか)はれた
のだと思ふことにして、遣り過しました。然し其の後は一種gallantlyを
以て應接をたまはるやうになり、「藏書を見たい」とか仰つて築地明石町の
舊居に見えられた時は膽を冷やしたといふ想ひ出があります。
 此の特集號では寄稿者が敬愛の念を以て稀世の梵文學者の〈人となり〉を
語つてをられ、拜讀してゐて目頭が熱くなりました。殊に、松山さんの
最期を看取られた丹羽蒼一郎さんの「蓮の臺に乗るまでに――(病院での
日々)」と「松山俊太郎年譜」には感銘を受けました。
「Fukujin」は日蓮宗系の先鋭的かつ甚だユニックな佛教研究誌にて、
表紙誌名の下に〈漬物から憑物まで〉と謳つてゐます。バックナンバーの
問ひ合せ先は下記の通りです。
 ◎福神研究所『福神』編集部=Tel:0545-52-0059

★「パルナッソス」創刊號

 池袋池三商店街の古本屋さんの創刊になる同人誌、同人の益岡和郎さんが
送つて下さいました。創作欄もありますが、巻頭の座談會《池袋書店今昔 
書店文化の発信地としての池袋》が面白い。私は若かりし頃、新宿牛込の
矢來下、すぐ傍の神田川江戸川橋を渡つた文京區側の水道二丁目に15年間ほど
住んだことがあります。有樂町線が通じてからは時々買物に出かけましたが、
たいていの用事は二つの百貨店とパルコで濟ませて町中には殆ど出なかつた
ので、此の座談會記録を讀んで些か悔んでをります。
 ◎千年画廊=Tel:03-5956-8186、Meil:shion_kanzaki@yahoo.co.jp

★「幽」yoo/Vol.24
 特集:リアルか、フェイクか

★「幽」yoo/Vol.25
 特集:人形/ヒトカタ

教皇ヒュアキントス ヴァーノン・リー幻想小説集

教皇ヒュアキントス ヴァーノン・リー幻想小説集

音叉の森

音叉の森

歌集 サンクチュアリ (新かりん百番 86)

歌集 サンクチュアリ (新かりん百番 86)